フィリピン 最底辺を生きる (岩波フォト・ドキュメンタリー 世界の戦場から)

フィリピン 最底辺を生きる (岩波フォト・ドキュメンタリー 世界の戦場から)
山本 宗補
岩波書店
売り上げランキング: 244410
おすすめ度の平均: 4.5
5 恐ろしい経済格差と自然破壊
4 フィリピン好きにはお勧め



戦争・紛争・テロが引き起こす惨劇と非道は,今も地球の到るところで繰り返されている.戦争の本質を瞬時に捉え,人間の真実の姿にはたと気づかせる写真の力を信じて,世界中の戦場を撮り歩くフォト・ジャーナリストたち.戦争拒否の思いを共有することを願って,彼らの選りすぐりの作品を世界中の人びとに送り届ける.

「スモーキーマウンテン」で生活するスラム街の住民たち,ネグロス島で農奴のような扱いを受けるサトウキビ労働者,ピナトゥボ火山噴火で強制移住させられた先住民族,ミンダナオ島で分離独立のゲリラ闘争を展開するムスリム.差別と貧窮にあえぐ人々の群れの中で生活した記録.そこには世界の理不尽と不公正の縮図があった

山本宗補(やまもと むねすけ)
1953年、長野県生まれ.フォト・ジャーナリスト.サンディエゴ・シティカレッジ(米、1979-81年)で写真の基礎を学ぶ.1985年からフィリピンの取材に取り組む.1991年のピナトゥボ火山噴火の取材がきっかけで、先住民のピナトゥボ・アエタ民族の取材を続ける(写真集としてまとめる予定).ビルマ(ミャンマー)の少数民族問題、民主化闘争の取材は1988年に始める.共同通信社による国際通年企画、「生の時・死の時」(1997年度の新聞協会賞受賞)の写真担当(タイのエイズ・ホスピス、インドの死者の家、ルワンダのジェノサイドなど).日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員.著書に写真集『ビルマの子供たち』(2003年、第三書館)、『ビルマの大いなる幻影』(1996年、社会評論社)、『ネグロス――嘆きの島(フィリピンの縮図)』(1991年、第三書館





この本には、日本の新聞やテレビなどのメディアでは、ほとんど伝えられていない、先進国民やフィリピンの富裕層と一般のフィリピン国民との間の恐ろしい経済格差とそれに伴うフィリピンの自然破壊が、明々白々に照らし出されています。
 日本では、「デフレで不景気で大変だ。年金はどうなる?」などと言っていますが、フィリピンではそれどころではない。
 恐ろしい経済格差が内戦を生み出し、富裕層の搾取に対して立ち上がった人々が、フィリピン政府によって「テロ集団」とされ、政府軍の討伐の対象にさえなっているという現実があります。
 日本政府も日本国民も、アメリカの「対テロ戦争」に加担するばかりではなく、「本当のテロ」とは何か、についてよく考えて欲しい。

 圧倒的な経済的弱者が、自分たちの土地や自然を守るために、已むに已まれず反抗するのが「テロ」なのか?
 世界のこの恐ろしい経済格差を無くさない限り、「テロ」は止まないと思います。
 アメリカの「対テロ戦争」に疑問を持つ全ての人に読んで(見て)ほしい本です。
 皆さん、ぜひ、読んで(見て)下さい。 


最初に「最底辺を生きる」というタイトルを見たとき、フィリピンにおける人権侵害の悲惨な様子を載せた写真集かと思ったが、この写真集には良い意味で期待を裏切られた。写真を見る限り「最底辺」は、単純に「社会の最底辺に追いやられた人たち」という意味で使っており、フィリピン人に対する「哀れみ」の意味は込められていないようである。また掲載されているエッセイからも、著者の山本氏がフィリピンの「最底辺を生きる」人たちと対等な友人として付き合っている様子が窺い知れた。フィリピンが好きな人には、お勧めの写真集。