フィリピーナはどこへ行った

フィリピーナはどこへ行った
白野慎也
情報センター出版局
売り上げランキング: 155974
おすすめ度の平均: 5.0
5 懐かしいあの子たちに再会できた気分でした。よかった!
5 安らぎと愛しのフィリピーナ達の行方


大反響のブログ待望の単行本化!「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者白野慎也が追う渾身のノンフィクション。フィリピン人エンターテイナーの入国が、厳しく抑えられるようになって2年余り。
全国のフィリピンパブが、どんどん消えつつある。歌に、踊りに、ショーに、つかの間の癒しを与えてくれた天使たちは今どこで、何をしているのだろうか? 「旅の指さし会話帳フィリピン」の著者・白野慎也が、フィリピーナの“その後の人生”を追いかける、衝撃のレポート。


フィリピン人タレント締め出しは正しかったのか?1日1食のカラオケガール、日本人パパを手玉にとるウェイトレス、17歳の娼婦…言葉を失う出会いの数々。

わが街からもタレントだけのフィリピンパブが1件もなくなって久しくなりました。以前パブで僕らに楽しいひと時をくれた彼女たちが、今どうしているのか気にかかったいたところで本書と出会いました。直接の知り合いらしきタレントは登場しませんでしたが、読み終わった後、懐かしいあの子達に再会できたようなさわやかな気分に浸ることができました。

貧しさの中でけなげに日本人向けのカラオケ店で働きながら生きる子、日本人のスポンサーを巧みにあやつりお金を搾り取るしたたか娘、売春という一見汚れた生き方をしながら、心は家族の未来を見据えてしっかりした人生設計を持っている子など、マニラの盛り場で新生活をスタートした8人の元ジャパユキたちの今の暮らしぶりが、著者とのインタビューの中でクリアに描かれています。

男としての視点と『旅の指さし会話帳』を手がけるほどのフィリピン語力を持った著者だから描けたちょっと不思議なインタビュー形式のノンフィクションです。個人的には著者の元タレントに接する共感に満ちた人間的なアプローチがとても好きで、これがさわやかな読後感につながっているのかな、と思いました。ただ1点ちょっと首をひねったのは、登場する元タレントが、水商売関係の女性にかたよっている点でした。

「新しい生き方としてみんながみんな水商売に身を置くわけはなく、他のもっと社会的に受け入れられる生き方を見つけた人もいるはすなのになぜ水商売の女性だけを選んで書くのか?」という素朴な疑問を抱いたのでした。『その部分だけ書くとまたフィリピンのイメージが悪くなるじゃないか』と短絡したわけです。僕は白野さんの1ファンであり、彼がフィリピンもフィリピーナもこよなく愛していることもよく知っています。

それだけにフィリピンとフィリピーナのイメージが悪くなるようなことをして平気でいるはずがないとも思っていました。
そこで彼のブログや本書のあとがきを見てみると、『フィリピン人社会に健全に復帰した元タレントの姿は別の機会に紹介します……』とあり、続編があることが分りました。水商売以外の元タレントの生き生きとした新しい人生がそこで描かれることを期待して僕はこの本に満点をつけたいと思います。

ブログから書籍になる過程で加筆された、著者白野氏がフィリピン・フィリピーナと出会うくだりも普通っぽくて親しみが持てるけどスリルとリアリティもあって面白かったです。元フィリピンパブファンはもちろん、特別フィリピンやフィリピーナに思い入れはなくても人間ドラマに興味のある人にはお勧めの1冊ですね。